応用言語学徒である近藤悠介のページ。現在、博士論文執筆中。

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Brown, C. (2000). The interrelation between speech perception and phonological acquisition from infant to adult. In J. Archibald (ed.), Second Language Acquisition and Linguistic Theory. Oxford: Blackwell.

修論が終わって、実はFLCASとかやろうとしてたんだけど、なぜか音声へと誘われて、最初に読んだ論文、これを読んでいたときはFeature Geometryがなんだか完全に不明のまま。でも、実際、この論文読むのにFeature Geometryの知識はほとんど必要ない。要は、featureが音韻的な最小単位で、それがL1にあるかないかによってL2の分節音習得の困難度が決まるって話。実験計画に多少ツッコミを入れたいトコがあるが、わりとまともな論文。最初のノウガキが長いわりには実際の実験には関係ないことが多い。まぁ勉強になっていいんだけど。


Brown, C. & Matthews, J. (1997). The role of feature geometry in the development of phonemic contrasts. In S. J. Hannahs & M. Young-Scholten (Ed,), Focus on phonological acquisition. Amsterdam: Benjamins.

Feature Geometryが実際のL1の分節音習得の説明にはまるかはまらないかを調べたもの。実験計画には問題がないのだが、結果の解釈に統計をつかってないので、そんなに一般化はできないはずなのに結論あたりでUniversal的なことを言ってしまっている。UG方面で散見されることだけど、統計なめすぎ。被験者3人とかでUniversalなことが言えたら、この分野、20世紀中に終わってるはず。よく考えるとGeometryをどうやって決定するかがすごく重要なのにも関わらず、あまり言及されていない。あと、Building/Pruning Hypothesisの話は果たして必要だったのか。研究の手法としてはかなりオーソドックスなので、学ぶことはたくさんあった。ちなみにこの二人は夫婦。


Hancin-Bhatt, B. (2000). Optimality in second language phonology: codas in Thai ESL. Second Language Research. 16,3, 201-232.

L2におけるcodaの習得をOTで説明しようとしたもの。先行研究→L1の観察→実験→解釈、この順序には全く問題がない、というか学ぶことが多い。rerankingでinterlanguageを説明するとか、L1の制約を考えるとかかなり勉強になった。実験計画に少し不思議なトコがあり、主張の根拠がパーセントというのがちょっと残念。ESSLLI2005でちょっとだけOTを教えてもらって、調子に乗って読んでみたら、意外に勉強になった、OTの用語もおぼえたし。入門的な教科書を読むのも良いんだけど、平行して実際に使っている論文を読むと理解がはやくなりますね。


Trofimovich, P., & Wendy, B. (2005). Learning second language suprasegmentals: Effects of L2 experience on prosody and fluency characteristics of L2 speech. Studies in Second Language Acquisition. 28, 1-30.

ゼミで読んだ。急にやることになって、今やってることに関係ある最新のものを読もうと思って、テキトーに探して、読んだもの。そのわりには、かなりちゃんとしてた。良かった。ここで言うsuprasegmentalsとはstress timing、peak alignment、pause duration、frequency of pause、speech rateのこと。技術的なことで少し勉強になった。評定者によってforeign accentednessってのを算出してんだけど、それも「これぐらいでOK」というラインが分かってよかった。結果は、研究としてではなく、一外国語学習者として、思うところはあった。つまり、melodyに関しては、exposureの量によって習得可能だけど、speech rateとpauseに関しては、いくら長く勉強してもnative likeにはなれないってこと。実感としてそれはあるよね。ここ最近、そこそこの研究に出会う確率が上がったような気がする。でも、アイディアの問題でこれくらいのことはできそう。(2006/04/25)


Levelt, C. C., Schiller, N. O., & Levelt, W. J., (2000). The acquisition of syllable types. Language acquisition. 8 (3), 237-264.

気が付いたら、1日で読み終わってた。分節音の習得もまだ終わってないけど、なんとなく、シラブルもやりたいなと思ってて2ヶ月ぐらい持ち歩いてた論文。オランダ人の子供がシラブルのタイプをどういう順番で習得していくかって話。OTで説明してて、「またか」と思ったけど、re-rankingが起こる理由を頻度で説明しているところがなかなか衝撃だった。でも、出現頻度で習得の順序が決定するなら、grammarなんていらないような気がするが、その辺はどうなんだろ。頭の中にcomplex codaはダメだとかそんなルールがかいてあるのだろうか。最近はそこら辺が疑問。syntaxでもそうだけど、tree構造みたいなのが頭の中に本当にあるのだろうか。もちろん、コンピュータに教えるのにはかなり有用な表記方法なんだけど、人間の認知能力を解明しているのかどうかは疑問。でも、とにかく、この論文を読んで、頻度って考え方が音韻習得に取り入れられていることが分かって良かった。Cognitive linguisticsを若干読んで、頻度とカテゴリにはまって、第二言語の音韻習得でも頻度とカテゴリかなと思ってたから。あとは、カテゴリってのをどう考えるかだ。(2006/07/07)


Eckman, F, R. (2004). From phonemic differences to constraint rankings   Research on second language phonology. Studies in second language acquisition. 26, 513-549.

本当に便利な世の中で、ヒマなときに落としておいたPDFをまた気分が乗ったときに印刷して、1ヶ月ぐらい持ち歩いていたもの。最近、深夜に盛り上がって論文を読んでる。これは実験系の論文ではなくて、今までの研究をまとめたもの。こういうのを書いてくれる人大好き。L2 phonologyに関する研究をすげぇ前からまとめたもの。CAHから始まって、FlegeのSLMとか、MDHなどをまとめたり批判したりして、UGのこともちょこっと言って(Feature Geometryのことはあんま書いてなかった)、その他いろいろあるんだけど、最後にはOTの話。これを読んでOTという仕組みがなんで脚光を浴びているのかちょっと理解できた。つまり、Language Universalに考えることができるってのがポイントだね。typology的に考えるんだよね。読めば分かるんだけど、もともとL2の音韻論ってかなりMarkednessを考えてて、そこでOTだからね。言わずもがな。でも、OTのconstraintがなんで出てくるのかは不明だし、人間の頭の中に制約がrankingされてあるって考えるのは直感的にあまりしっくりこない。(2006/07/15)


textbook

南風原 朝和. (2002). 『心理統計学の基礎‐統合的理解のために』. 東京: 有斐閣.

実験計画と統計を本当に基礎から学べる。ソフトウェアの使い方とかはまったく書いてない。僕が読んだのはある程度統計解析の知識を得て、SPSSとかが使えるようになってからだけど、初学者でも学べるはず。順を追って読んでいって、ここに書いてあることが分からなかったら、本気で中学生の数学からやり直すか、適性がないと思ってあきらめるしかない。そんな基礎的な本でありながらも、学ぶべきところは多い。実際、英語教育や言語学、第二言語習得の分野でわりとまともにやってる人でも、ここに書いてあることすら知らないで、「分散分析の結果が有意だったので多重比較をしました」みたいなことを言ってる人がたくさんいるし、分からないからって勉強する気がなくて、開き直ってる人もすげぇいる。この本の表紙にも書いてあるけど、「心理統計学は実証的な心理学研究において欠くことのできない、重要な学問」なのです。心理学研究に限らず、実証的な研究をする以上、統計は不可欠なのです。この本に書いてある帰無仮説の説明を読めば、等分散性の検定がなぜ必要なのかが分かるだろうし、相関係数の説明なんて、直感的にもすっごく分かりやすい。ちなみに著者の名前は、おそらく、「はえばら ともかず」と読む。沖縄県に多い苗字です。


Kager, R. (1999). Optimality theory. Cambridge: CUP.

実際のところ、ESSLI2005に行く前からOTに興味あって、Feature Geometryの論文を読んだときにOTやった方が良いといわれて、個人研究費で購入。だいたい精神は理解できて、あとは制約を考えるためにphonologyを勉強しなきゃと気付かせてくれた本。少しだけ音声学/音韻論の知識があれば、簡単に読めます。Prince and Smolensky (1993)の方が分かりが良いらしいのですが、この本でも十分にOTの精神は理解できます。


窪薗 晴夫 本間 猛. (2002). 『英語学モノグラフシリーズ15 音節とモーラ』. 東京: 研究社.

研究室で買ってもらった。前半は音節とモーラがどんなものかという説明で、後半は音節構造の有標性理論と最適性理論のイントロみたいな感じ。学部でやってるような音声学の知識があれば十分読める。個人的には、CambridgeのPhonologyに書いてあったskeltonとmelodyって概念を知っとくとさらに読みやすいのではないかと思う。前半はホントに分かり易く書いてあって、スルスル読める。音韻論をやる上でモーラと音節という概念はかなり重要。後半は、憶えとかなきゃならんことがいくつかあって、若干疲れる。でも、兎に角、音節に関する基礎知識を得ようと思ったら、これ以上簡単に書かれてる本はないかも。ちなみに、窪薗晴夫はエジンバラ大学で博士。(2006/03/27)


White, L. (2003). Second Language Acquisition and Universal Grammar. Cambridge: CUP.

一緒に読んでくれた後輩に感謝。3ヶ月かけて読み終えた。本物の生成文法はこんなにらくちんじゃないんだろうけど、おれがやりたいのはSLAだからこんなもんでいいんだと思う。それでもUGでSLAやってる人々がいかに甘いかっていうのが分かった。モデルがぐだぐだで実験計画の甘さを批判し合って、でも測定&統計はかなりテキトーで。それでも学ぶことは多かった。つまり、おれが学部のときにいかにsyntaxとかを勉強してなかったかってことだけど。ある程度期限を決めて読んでいたので、朝早く起きて読んだりしたってものあって、英語を読む力も促進されたような気がする。まぁ、でも、とにかく、モデルを提示することは大切だ。(2006/05/06)


豊田 秀樹. (2002). 項目反応理論入門 [入門編]. 東京:朝倉書店.

博士に入って1年半経って、やっとなんとなくどちらに行けば良いのか分かったような気がした。それでIRTは不可欠と思い、まさに入門しました。「残念ながら数学的に非常に高度である。したがって証明を省き、結果だけを示す。読者は「なぜか」ではなく、何が説明されているかに関心を集中して読み進めていただきたい。」って本文中にも書いてあるし、こっちも証明とか最初から分かろうとしてないし、分かったところであんまり収穫がないのは知っているので、そこらへんは適宜飛ばして読んだ。で、今、これの[事例編]を読んでるんだけど、読みながら適宜参照してけばいいかなって感じ。何もかも完全に理解するのは無理だけど(だいたい正規分布って何よ?)、仮定しているものとか論理の流れとか、そのへんがよく分かった。先輩助手が豊田ゼミだったり、ちょっと見たことあったりして、知ってるんだけど、実は熱い人なのかもしれない。(2006/09/15)


豊田 秀樹. (2002). 項目反応理論入門 [事例編]. 東京:朝倉書店.

IRTを使った質問紙の分析例がいくつか載ってる。心理特性ってのを質問紙で測って、数字の処理をどうするかってこと。お作法がしっかり書いてあって、かなり勉強になるし、知らない統計手法とかソフトウェアとかが出てくるので、ちょっとやってみようかなとか買ってみようかなと思ったりする。心理が専門じゃなくて、お作法を学ぶ場合は、同じような事例の連続なので全部読む必要はない。でも、IRTを使って自分でもいろいろできそうって思わせてくれたのはすごくよかった。(2006/09/18)


靜 哲人. (2007). 基礎から深く理解するラッシュモデリング. 大阪:関西大学出版部.

かなりの入門書。第1部はIRTの理解に関連した高校数学の復習で、第2部はテストに関する基礎的なこと。で、第3部でやっとラッシュモデルがでてくる。最初の2/3はかなり基礎的なことなので、分かってる人は読み飛ばしてしまうかも。でも、テスト理論関係を全く知らない人にとっては、こんなに丁寧に書いてくれてる日本語の本は他にはない。13章までは、数学の基礎、テストの基礎、ラッシュモデルの基礎となってるが、14章からは靜先生のIRT批判が始まる。これがなかなか面白い。みんなが使ってるからあまり疑問に感じなかった弁別力という概念も、改めて考えてみると割と微妙な概念なのかもと気付かせてくれた。あとは、構成概念の重要性。やはり、なんにしろ、モデルは重要である。(2007/08/06)


荒木 雅弘. (2007). フリーソフトでつくる音声認識システム パターン認識・機械学習の初歩から対話システムまで. 東京:森北出版.

日本音響学会主催のJuliusの講習会に行って、そのななめ前の人が持っていた本。前書きにも書いてあるけど、音声認識方面に進もうとする学部3年生のために書かれた本。まさにおれが求めていた本。パターン認識の基本的な考え方、基本的な手法が説明され、隠れマルコフ・モデルが説明され、最後はWindowsで動くHTKの使い方まで丁寧に書いてある(その通りやってもなぜかうちのHTKは動かなかったけど)。前提知識なしに理解できるようになってる入門書です。もしここに書かれていることが理解できなかったら、やはり高校生までにやった数学を復習するしかない(この本の最後にも数学的補足が書いてあるけど)。文系の人にとってはなかなかとっつきにくい理系の音声学への橋渡しをしてくれる。(2008/01/28)


book

Baker, M. C. (2001). The atoms of language. New York: Basic Books.

図書館で借りて読破した数少ない本の中の1冊。生成文法に関しては、学部で中途半端にしかやらなかったので、イントロ的なものを探してて偶然見つけた。生成文法のルールがどうやって決まったかということが書いてある。あと、「ルールが階層化されてる」みたいな著者の意見が最後の方で述べてある。生成文法って聞くと、ちょっとお友達になりたくない感じだけど、この本を読むと、そんなことはなくて、論理展開が直感と相反しない感じ。あと、例え話がすごくなじむ。著者は生成文法でだいたいいけると思ってるみたい。これと町田健のチョムスキー関連の本を読んで、なんとなくだけど生成文法が分かったような気がした。(2006/03/27)


村上 宣寛. (2005). 「心理テスト」はウソでした. 東京:日経BP社.

発売当初に心理の修士の人に薦められたんだけど、なんとなく興味はあったけど、読まなくて、研究室の先輩が持ってるのを知って、買って読んでみた。結論から言うとかなりの良書ですね。英語教育方面の修士に入学する人は、少なくともここに書いてあることは全部理解できてから入学した方が良い。まぁ、M1の4月に授業で集中的にやってもいいかもしれない。とにかく、統計はなんのために使うのかってのがよく分かる、まぁ、これも一側面に過ぎないのかもしれないけど。少なくとも、英語教育方面で修論を書く分には、このスタンスが理解できてれば良いと思う、統計に関してはってことだけど。あと、心理学が言うところの「特性」を測るってのがどういうことなのかってのも分かるしね。向学心の高い他分野の人も前提知識があまりいらないので、通勤・通学の電車の中で楽しんで読めると思う。(2006/09/16)